芸術とは何か −−−芸術の目的
 

芸術とは辞書によると美の創作活動と定義されています。そうであれば芸術は美しくなければならず、そして模倣ではなく創作でなければなりません。では芸術の目的である美とはなんでしょうか。それは喜びと幸福をもたらすもの、或は感じさせるものといえます。そうであれば、芸術の目的は人生の目的と密接に関係があるといえます。即ち芸術の目的は世界を平和にし、宇宙、人生、社会に関する真理を追究し、人々を本質的な意味での幸福に導く事であると言えます。

 芸術は創作である故に、私は自然にある物も人の手による物も、何物をも真似することの無い、できるだけ独創的でユニークな、新しい芸術を作り出したいと願っています。だからと言って私は自然を模写する写実的な絵画を否定している訳ではありません。ですからその面での研究も続けたいと思っています。しかし、抽象絵画はより独創的であり模倣性が無いので、私にとって面白味のある分野であると言えます。それで私は主として抽象絵画の研究に取り組んで行きたいと思っています。

 ある人は抽象絵画を見ると、意味が分からないと言って首をかしげる人もおりますが、必ずしも芸術は分かるためのものではなく美を感ずるためのものである事を知っておく必要があります。その面で抽象絵画は音楽に似ているといえます。音楽は何もわからなくても音の美しさを充分に感じ取って満足している人が数多くおります。ところが残念な事に抽象絵画になると意味が分からないといって、その美しさを感じとろうとしない人が少なくありません。具象絵画になると、人物や風景や静物などすでに存在するものに対する模倣性が含まれているために多くの人々は分かると言います。しかし芸術は辞書にある通り模倣ではなく創作なのです。それで意味が分からなくても色彩や造形上の純粋の美を感じ取って欲しいと願っています。

 抽象絵画は純粋の造形美のみを追求しそれ以外の意味の無い物もあります。しかし深い意味付けのある物もあります。それで私は抽象絵画が「分からない」で終わってしまう事の無い為に、一つ一つの作品に制作の意図や動機や意味を文章にて説明する事にしました。その文章は作品に対する一つの詩であり、絵画と文章は対をなす作品であると考えて良いと思います。

 私は芸術家としてできるだけ模倣性の無い、独創的な絵画についてより深く研究し、探求し、高度化し発展させ、過去に存在しない新しい絵画を開発することに努力したいと思います。そして世界を平和にし本質的な意味で幸福を築き上げるような作品を描きたいと願っています。

 私は世界に一つしかない高価な宝石を作るような気持ちで時間をかけることを惜しまず、全力を尽くし、量よりも質を重んじ、真に価値ある絵画を描くように努力したいと思います。

 私は自分の描く抽象絵画のことを色彩で表す音楽のようなものと考えています。その故に、私のあみ出したユニークな技法や画風の事をピクチャーミュージックと称します。私はいわゆるピクチャーミュージシャンとして形や線や色彩を用いての、より新しく美しくより高度な作品を生み出す事に努力を続けていきたいと思います。